––自己紹介をお願いします。
円盤に乗る派の畠山峻と申します。よろしくお願いします。
––畠山さんは何年に「円盤に乗る派」に加入されたんですか?
カゲヤマくんとの関わり自体は12年くらいあって結構長いですね、「円盤に乗る派」の前身の「sons wo:」の時から関わっています。(団体には)2022年とかに出たお芝居の繋がりで呼んでもらいました。これまで出たお芝居のだいたい半分くらいは、カゲヤマくんの作品になると思います。
––「円盤に乗る派」は畠山さんから見てどのような印象ですか?演技体など特殊な部分も多くあるように見えますが、団体に加入する決め手などあったんでしょうか?
団体に入ること自体にはそんなに深い意味はなかったです。誘われた時点では下駄くんとカゲヤマくんがいて、メンバーを増やそうと思っているという話を聞いていて。これまで何回かカゲヤマくんの作品に出てたのもあって声をかけてもらって。取り立てて団体の中で何かしたいとかはあまりなくて、舞台に立ちたい以外のことはあんまり考えていなくて(笑)。継続的にそれができるという話であれば、あんまり役に立つかわからないですけど入ることに関しては全然いいですよみたいな感じでした(笑)。下駄くんとカゲヤマくんに対して単純に信頼があるから、人に惹かれて入ったという感じですね。
––「円盤に乗る派」はプロジェクトと名乗っていると思うのですが、『人に惹かれた』というのは団体の制度や構造ではなく、プロジェクトと名乗っていることとつながる感じがあるような気がします。
確かにそうですね。劇団だともう少し閉鎖的な感じがするんですけれど、プロジェクトというとメンバー以外の第三者もいっぱい関わる感じがしていて。ぼくが『人に惹かれた』と言っているのは、あんまりそのどちらというわけでもなくて、ただカゲヤマくん、下駄くん、そして一緒に入った渋木さん、その人たちが好きだから入っているという感覚があります。本当はプロジェクトという考えに関して、プロジェクトメンバー的な振る舞いをしなきゃいけないはずなんですけど、そこに対しての自分の認識は薄めなんですよね。
––プロジェクトメンバー的な振る舞いというのも人それぞれという感じもしますね。
他にプロジェクトメンバーというところを聞いたことがないので、参照するものがそんなにないというのはあります。きっと何かの意思があるんだろうとは思いつつ(笑)
ちょっと話が前に戻りますけど、変わった演技体という風に言われていることに対しては、みんなそれぞれがまともに取り組もうと、真面目にやろうとしたらこうなっているんですよ。奇を衒ったことをやろうとする人はおそらく一人もいなくて。ぼくの主観ですけど。結果的にみんなこうなっているという感じがあって、そういう人たちが集まっていることが好きです。みんなすごい頭のいい人たちなんですけど、別に頭でっかちというわけではないので、演劇でやる必要があることをやれているなという気がします。
––畠山さんがこの前「TeXi’s」という団体にも出られているのを拝見して、「円盤に乗る派」で演技をすることとはすこし違いがあったりしますか?
違うと思います。「TeXi’s」もだいぶ 他の団体に比べて違った気がするけど。その2つを比較したときに面白いのは、2つとも普通に喋ろうとすると喋れないセリフなので、『喋れない』ということが最初に意識されます。テキストへの違和感を割と頭で考えて、間を開けて変な言葉について思考をめぐらせたり違和感を引き受けるのがるのが「 円盤に乗る派」に出てる時の自分だとしたら、「TeXi’s」に出ている時は、言葉をまずは言ってみた後のその場の感じを体で引き受けてみるみたいなのが最終的な納得の形だったかなと思います。テヅカさんの戯曲もカゲヤマくんの戯曲もどちらも不思議な文章ですが、取り組み方はものによって違います。
––「円盤に乗る派」に出ている時、継続して取り組んでいるテーマなどはありますか?
継続している意識はないですね。カゲヤマくんが戯曲を書く上での思想的な背景とか継続している何かはあると思います。その時々でアウトプットが変わったり、その思想的な背景が演出プランへの関わり方にも影響しているというのはある気がするんですが、じゃあ「円盤に乗る派」で公演をやって、蓄積していくものから世界に影響を与えていこうみたいなものはないような気がします。あんまりわかんないけど(笑)
単純に、売れるといいよね、もっといろんな人が見てくれるといいよねというのはあって。だから結局毎回仕切り直す形になっているんだと思います。
––畠山さんも参加する時毎回仕切り直しているんですか?
仕切り直しますね。でも結局癖が出ちゃうということも引き受けているという感じです。
––『仮想的な失調』の再演に向けて稽古が始まっていて、今日からお盆休み明けで稽古が再開すると思います。ぼくはこれまで「円盤に乗る派」の作品は継続してみていて、ずっと楽しみ方がわからないなという気持ちだったんですけど、『仮想的な失調』の時にようやくわかったような気がしました。出演者として、『仮想的な失調』という作品への印象を伺えたらと思います。
そうですね、『仮想的な失調』はこれまでの「円盤に乗る派」の作品とは明確に違う感じがあります。テキストの不思議さとか、瞬発的に変なことが起こる感じとか、すごい間が独特というのはそのままですが、 普通に楽しんで見れる感じがある。今回は『船弁慶』と『名取川』という下敷きがあって、変わりようのない物語の筋があるという点も違いを作っていると思います。行為とか言語の違和感の中で後景化されてしまいがちな物語性を、今回はそれを前景化して一つの筋としてやってみるというのがシンプルに見やすさを作っているように僕は思います。
––今のお話はさっきの仕切り直すという話とも繋がっている感じがします。毎公演トライがある感じがします。全体の印象としては統一感があるけれど、毎回違うことが起きているというのはいつも感じることです。
違いますね。毎回、トライしたいことをカゲヤマくんが毎回稽古のときに話してくれてからはじめることが多くて。普段はそのトライが一回の公演に向けて立てられるけど、今回は再演ということもあって、初演の時にトライしようと思っていたことがそもそもどういうものだったかを喋りながら思い出すことから稽古が始まりました。俺たち何がしたかったんだろうって。
––座組のメンバーが真面目って言っていましたが、ちゃんとその順番で再現に向かっているんですね
そうですね、座組の全員が真面目だからですね。初日の稽古の時に戯曲をもう一回読みとこうという流れで上演の映像をみたりしたら結果的にそういう方向に向かっています。再演だから前の上演の真似をしたら終わり、という考え方をしている人が一人もいなかったという感じです。楽できないなと思いますね、再演だから楽という訳じゃ全然ない(笑)
––畠山さん個人としては、「円盤に乗る派」の作品を再演するということはどんな印象ですか?
怖いですね。一回見たことがある人がいるし、一回完成したモデルがあるから、別にそれを追い求めてる訳じゃないんですけど、なんとなく追い求めちゃう。再演特有の不安があります。あと、『仮想的な失調』では、演技に関して根詰めて考えるみたいなスタイルじゃなかったんです。根詰めて考えるみたいな出方をする作品もあるんですけど、初演の時、あんまり深くものを考えないようにしようとか、元気に人に優しく言おうみたいなふわっとした状態をキープする演技をやっていて。ふわっとした状態をもう一回やるのは大変だなと思っています。枷とか問題があった方が思い出しやすいんじゃないかという気持ちがあるので、ふわっとしていることへの怖さがあります。
––ここからの稽古で、もう一度ふわっとした状態をつくっていくんですね。
そうなんです。ぼくのシーンが今日から稽古なんです。ここまでの稽古ではぼくが一言喋って終わるというところまでで止まっているので。今日すごい緊張しています。
––今回は初演と同じ形を目指すと伺っていて、どのような感じで進行しているんですか?
気構えとしてはその気持ちでスタートしているんですが、ちょっとずつ変わってきている部分もあると思います。でも、違うことを許さないということはなくて、その変化も潰さず、ちょこちょこ部分的にみんな変わっていることもあるよね、と一旦置いているという感じで進んでいます。だから通しとかが始まったらまた変わるだろうし、空間も全く別なのでそこに対して変化がまた起こるんだろうなと思います。
––演出が二人いるという状態はどのような印象ですか?
難しそうだなと思います、二人が。初演の時は難しかったという感じな気がするし、今もまだ別にわからないなという感じに見えます。演出家の領分を、綺麗に文節化して分けることはできないじゃないと思うんですよね。はみ出てくる領分が出てきて二人ともが干渉している部分もあるので、そこは難しいだろうなと思います。
––演出を受ける側としてはどのような印象ですか?
演出を受ける側の気持ちとしては、時間が許すのであれば、どっちの意見も試したい気持ちです。お互いの意見を倍の時間をかけて試して、こうした方がいいねということを見つけていけると楽しいですよね。やりがいもあるし。ただ、演出家としての判断やスピード感が二人は全然違っていて、とても難しそうだけど、継続してやり続けてくれてることがありがたいです。出てる側としては、無責任なところに責任をもつというか、とりあえずやってみるという感じがあるので、二人の意見をどちらも引き受けたいと思っています。それに再演をやるなら、その部分をやらないと成り立たないと純粋に思います。
割と難解な団体だと思われている節があると思うんですけど、『仮想的な失調』は古典を元にしているし、共感とかをしっかり保てる部分があるので、「円盤に乗る派」を最初に見てもらうにはすごい見やすい作品だと思います。この機会に「円盤に乗る派」を見ていただけたらという気持ちがあります。
インタビュー・編集:中條玲
撮影:濱田晋