円盤に乗る派『正気を保つために』映像公開について

昨年上演しました、円盤に乗る派としての最初の作品『正気を保つために』の映像を全編公開しました。
https://www.youtube.com/channel/UCOCe3oRyYEwCSH1l4PaEBJA/

期間限定ではなく、恒常的にご覧になれます。なぜこのような公開に踏み切ったのか、理由を以下に書きます。

現状、日本の演劇シーンは、公演のスパンがとても短いです。多くのカンパニーが1年に1本以上の作品を(たいていは新作で)発表していると思いますが、他のジャンル、例えば映画や音楽などと比べてもこれは非常にハイペースです。カンパニーとしてのありようを維持するためにはそれくらいのペースが必要というのは体感的に理解できるのですが、観客側としてはすべてをフォローアップするのが難しい。あるいは網羅的にではなくしばしば観るくらいが、「劇団」との関わり方としては正しいのかもしれません。

しかし、昨今の現代演劇は、伝統芸能的に似たような作品を定期的に繰り返す固定化された「劇団」ではないのですから(そういう劇団も必要だと思いますが)、しばしば観るくらいではそのカンパニーがどういうことをやっているのか理解しづらい。結果、個々の作品について語ることはできますが、作家論的な語りができるのは、毎回欠かさず観ているような特権的な観客に限られてしまう。このことは演劇文化に閉じた傾向を与えてしまうし、強烈な、わかりやすいキャラクターを持っていないカンパニーはより「よくわからない」ものになってしまうのではないか、という危惧が私にはありました。だから、過去作品に接続できる要素が必要と思います。

映像では公演と同じ体験は得られないかもしれませんが、どういったものか理解はできます(し、私は映像で演劇を観る体験は、決して公演に劣るものではなく、別種の特殊な体験であると考えています)。作家論的なものがわかることによって、個々の作品に対してもより深い鑑賞が可能でしょう。

どれだけステートメントで言葉を尽くしても、どれだけデザインを練り上げても、どういった態度で初めての観劇に向かえばいいのかはわからないものです。確かにそれは観劇に慣れてくるとなんとなくわかってくるものではあるのですが、もちろん世の中にはその感覚を持っていない人の方が大多数です。この試みによって、観劇に向かうみなさんの身体に少しでも良い影響を与えられたらと思います。逆にわからなくなった、という反応もありそうですが。ともかくあらゆる方々にとって貴重な観劇体験が、より豊かになることを願ってやみません。

カゲヤマ気象台